*これまでのお話
第1話 冒険の始まり https://amaterasu-hikari.jp/_ct/17350427
第2話 髪の力 https://amaterasu-hikari.jp/_ct/17351775
第3話 光のバリア https://amaterasu-hikari.jp/_ct/17385510
第4話 黒い犬と「精神の餌」https://amaterasu-hikari.jp/_ct/17401575
第5話 世界に闇と光を創造する魔法の指はどの指だ!? https://amaterasu-hikari.jp/_ct/17406823
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わかったわ!宇宙で最強の魔法が宿るのは・・・

かみながこちゃんはスタスタと歩いていきます。

隣には、燃える黒い犬がチャカチャカ歩いています。

「あのね、さっきの質問、よく答えられたね。

ちゃんと正解だったから、ほっとしたんだお」

と、犬は真っ赤な瞳でかみながこちゃんを見上げます。

「ずいぶん時間かかったし、途中でぶりぶり怒ってたから、もうムリかと思ったお!」

「なによぉ」

「答えられなかったら、

君をここから先には通すことができないのは本当だったんだお。

別のところに連れていかなきゃならなかったんだお。

僕もそれ、嬉しくない。

だから、そうならなくて本当によかったおっ!」

「やあね。別のところって、どこなのよ?」

〜〜〜

さっき、かみながこちゃんは、燃え上がる黒い犬の質問にこう答えたのです。

「わかったわ。宇宙で最強の魔法が宿る指。その答えは、この指よ!」

かみながこちゃんは自分の両手を開いて、黒い犬に向かって突き出しました。

「宇宙の光と闇を創造する、一番パワフルな魔法の指は、どの指か?

それは、私のこの指。

私の指。

私の指、全部よ。

あなたの指じゃない。

あなたの指のどれかをつかむのかと思ったけど、そうじゃない。

これはひっかけ問題だったのよ!

私にとっては、私の指のぜんぶが、光と闇を創造する、魔法の指なんだ!」

すると、黒い犬は「ぱかっ」と口をあけて、勢いよく跳ね回りました。

尻尾が千切れそうです。

「そうだよ。その通りだよ。

よくわかったネェー!

ああー!よかったんだお。

これで通してあげられるんだお!」

~~~

犬があまりに嬉しそうにちゃかちゃか歩くので、かみながこちゃんもニコニコしながら歩きました。

ところで、もし黒い犬が「とおせんぼ」しても、かみながこちゃんは、なんとしても進むつもりでいました。

なにしろ、行き先は「髪ナビゲーションシステム」が教えてくれているので、わかっていたからです。

「それでも・・・なんか、よかったなあ。この答え、正解できて」

そう思いながら、かみながこちゃんは、犬と並んで歩いていきます。

「さっきの質問ってね、間違える人がけっこういるんだお」

「へえっ」

「自分じゃない誰かにはパワーがあるけど自分にはパワーがないとか、自分の外側に魔法のパワーがあるって思っていると、僕の指をつかんだりしちゃうんだ。

そうすると、ただ質問の答えを間違うだけじゃない。

この先、いろいろと間違えちゃうんだお。そういう人には、ここから先の道のりは危ないんだお。

だから、間違えちゃったら、通せんぼなんだお」

「ふうん。それで、〈親を許しているかどうか〉ってことは、さっきの質問と関係してるわけ? どうなの!?」

「悲しくてやりきれないときは、薬指をそっと、つかむんだお」

黒い犬はそれには答えず続けます。

「・・・あのね、ついでに、これ、教えといてあげようかな」

「なあに」

「手の指には、惑星から降り注ぐ幸運エネルギーを受け取る力がある。自分から放射する力もある」

「さっき言ってたわね、それ」

「で、それ以外にも、手の指にはすごい、魔法みたいな力があるんだお。

実は、指をつかむことで、感情を落ち着かせることができるんだおーっ!

さっき、かみながこちゃん、いっぱい怒っていたでしょ。

怒りを制御できないと、ここから先は危ないんだからね」

「なによぅーっ!」

「ほらね。怒った。

じゃあ教えるよ。気持ちがグラグラ動く時は、〈感情に対応する指〉をそっとつかむこと。

そのまま、ゆっくりと、呼吸をくりかえす。

そうすると、気持ちが落ち着いてくるんだお。

いい?

*親指=不安、心配

*人差し指=恐怖

*中指=怒り、イライラ

*薬指=悲しみ、後悔

*小指=焦り、がんばりすぎ

例えば、イライラしてきたら、中指をそっとつかむ。で、ふーっと息を吐いたり、吸ったりしているだけで、すうっと落ち着くよ。

同じように、悲しくてやりきれないときは、薬指をやさしくつかむんだお。それだけで、ちょっと楽になってくるから」

「へえ・・・おもしろいね、それ」

「そうでしょ。人間の指って、“目に見えないエネルギーの糸”で、その人の感情とつながっているんだお。

えーっと、例えば、赤ちゃんって、指をちゅぱちゅぱしてるよね?」

「あ〜! 私の妹は、親指をよくしゃぶってたよ」

「それはね、安心感がほしくて、本能的にしゃぶってたんだお」

「ふうん。そういうことか。そういえば一番上のお兄ちゃんは、幼稚園に入っても、人差し指と中指をしゃぶってたんだって。その話を聞くたびにお兄ちゃん、嫌がるんだけど」

「それはわるいことじゃないんだお。お兄ちゃんは、うちなる恐怖や怒りを鎮めることに取り組んでいたのかもしれないんだお。

そもそもの話、感情っていうのものは、別にわるいものじゃないんだお。

だけど、感情に振り回されると、肝心なところで大事な判断を間違えたり、苦労したりすることってあるから。

これも、覚えておくといいと思うんだお〜っ。

この先、ぷりぷりしそうになったり、怖くなったりしたら、思い出してね」

「なによ、やあね! でも、ありがとう」

と、かみながこちゃんは答えました。

おうちに戻ったら、いつもがんばりすぎているママや、心配性のお姉ちゃん、怖がりの妹にも教えたいと思ったのです。

そうそう、オコリンボだったら、やっぱり、私というよりお兄ちゃんだよねえ。

かみながこちゃんはちょっと楽しくなって、黒い犬と一緒に、島の上の方へと続く階段を登り始めました。

不気味な「木の古いくし」をゲットした!

かみながこちゃんの髪が、階段のわきの古い木の手すりに巻き付くようにして、上へ上へと延びています。

黒い犬は、ニヤッと笑うように口を曲げて

「早く早く!」と言いました。

ついてこい、とばかりに、時々振り返りながら歩き始めます。

相変わらず炎を立てて燃えている、黒い犬のお尻がぷりぷりと揺れます。

「まだ燃えてる。いったいどうなってるの、このワンコちゃんは」

じりじり照りつける日差しのなかで、ブーゲンビリアの真っ赤な花が、ゆげをたてるような鮮やかさで咲いています。

 しばらく、黙々と登り続けると、汗がにじんできます。途中に踊り場があって、黒い犬は立ち止まると、かみながこちゃんを見上げました。

「この島はね、レムリア大陸っていう昔の大陸の一部なんだお。

りっぱな場所なんだお、オオカミ島っていうんだお」

「ふうーん。それで、あなたはオオカミさんなの」

「その質問には、こたえることができないんだおー!」

と、黒い犬は燃えるような赤い瞳を向けて、激しい調子でこたえました。

炎が強くなってきます。

「ちょ、あなた、またなの? どうしてそうなっちゃうの? 怖いのよ、それ」

「ほんとの名前をなくしちゃったからだお…。

世界の柱がなくなっちゃったとき、僕の名前もわからなくなった。

名前、名前、僕の名前、取り戻したいんだおー」

その様子は、今にも壊れそうな薄いガラスのようでした。

なんだかかわいそうになって、かみながこちゃんは言いました。

「なんかさ、それね、わたし、力になれるかもしれないよ」

「ありがとう。いいんだ。たぶん無理だと思うから。無理しなくていいんだお」

燃える犬は、階段をちゃっちゃっちゃっと駆け上がっていきます。

犬が歩いたあとには、炎が足跡の形に燃えたっているのでした。

かみながこちゃんは、燃える足跡のわきを通って、大急ぎで犬の後をついて登って行きました。

からみあったジャングルのような木々の間を抜けて、木で組んだ階段は山頂へ向けて伸びています。

ほどなく見晴らしのいい丘の上につきました。

そこには、古い石造りのほこらがあり、燃える犬が待っていました。

ほこらの後ろには、見たこともない大木が、天へ向かって伸びていました。

その太いことといったら、何十人が手をつないでも、まだ周りを囲いきれないほどの太さに見えます。

かみながこちゃんの髪は、その大木にぐるぐると絡みついています。

「黒いわんこちゃん、道案内ありがとう。あなたの役に立てるかどうかわからないけど、私、この木を登ってみるね」

かみながこちゃんはそう言うと、黒い犬に近寄って、燃え上がるその足を、自分の手でぎゅっと握ってあげました。

「悲しみを鎮めるのは、薬指だったっけ? 全部まとめて握ってあげればいいよね」

「や、やけどしちゃうよ!」

「大丈夫だよ・・・。ほら、私の指はさ、宇宙で最強の魔法の指なんだから」

実はさっきこっそり、髪の毛を編んで、丈夫な手袋を作っていたのです。

犬の足を握りしめていると、ちょうど、たきたてのご飯をおにぎりにするときのような熱さでした。

燃え上がる黒い犬は、しばらく黙っていたかと思うと、

「ありがとう。優しくしてくれて。

お礼ってわけじゃあないけど、これ、あげるね。

これ使うと元気出るよ。

僕のこと、忘れないでね」

そして、かみながこちゃんの手をちょっと握り返すと、くるっと後ろを向き、祠のなかに消えてしまいました。

犬のいた後を見ると、何か輝くものが落ちていました。

それは小さな木の古いくしでした。

かみながこちゃんは木のくしを拾って、しげしげと見ました。

そこには文字のようなものが書かれていました。

まるで青空のような色の文字です。

「なんだろ?」

じっと見ると、文字のようなものは薄れてしまいます。

けれど、少し目をそらすと、鮮明になるのでした。

試しに文字を人差し指でなぞってみると・・・。

とたんに、くしから無数の手と指が飛び出てきて、かみながこちゃんの髪の毛を猛スピードでくしけずり始めました。

「ぎぇえ〜っ! き、きもい! このくし、なによぉ」

振り払おうとしますが、くしの勢いは止まりません。

あっというまに、ボサボサだった髪を整えてくれました。

「あらっ。本当に元気出た」

かみながこちゃんは、そのくしを大事にポケットに入れました。

(第七話へ続く)

画像: 不気味な「木の古いくし」をゲットした!

西田普(にしだあまね)
1972年、東京都生まれ。早稲田大学卒業。作家、「アマテラス!」編集長。(株)光出版 代表取締役。月刊『ゆほびか』編集長を務めるとともに、 季刊誌『ゆほびかGOLD幸せなお金持ちになる本』を創刊し、編集長を兼務(〜2019年9月、ともにマキノ出版)。書籍ムックの企画編集も手がけ、累計部数は300万部を突破。健康・開運をテーマしたブログがアメーバ人気ブログランキング「自己啓発ジャンル」で1位を獲得。現在、アメーバオフィシャルブログ・プロフェッショナル部門、月間のアクセス数は315万を記録。物語創作がライフワークで、第1作の「あなたがお空の上で決めてきたこと」(永岡書店)が好評を博している。ブログ「自然に還れば、健康になるでしょう」https://ameblo.jp/toru-nishida/

*この物語はフィクションです。実在の人物、団体、出来事とは一切関係がありません。

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