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5 「この髪は、かみながこちゃんの血みたいなものなんだ」

大きな龍は、ニコニコしながら言いました。 

「いいかい、かみながこちゃんの髪は、心の力で動くんだ。

好きな長さに髪を伸ばせるし、短くもできる。

右にも、左にも、上にも、下にも、自由自在に動かすことができる。

手よりも器用に、モノをつかむこともできるし、投げることもできる。

その気になれば、どんな形にだって変えられる。

なんなら、髪を乗り物の形にして、自分を乗っけて、運ぶことだってできる。

好きなときに、好きなように使っていいんだよ」

「へぇー、そうなの。なんか、便利そうだね」

「そうさ。すごく便利なんだ。

この話を聞いただけでも、スイッチが入って、髪の力を使えるようになっているはずだ。

ちょっとやってごらんよ。そら!」

龍は、どこから出したのか、リンゴを放り投げてきます。

すると、髪がするするっと伸びて、リンゴをキャッチしました。

「お、上手だね」と、龍。

かみながこちゃんはちょっと得意な気持ちになりました。

「えい!」と、かみながこちゃんが念じた瞬間に、リンゴは、皮がペロッと向けて、8等分になって、髪の毛のお皿に乗っかりました。

髪が鋭いカッターになって、一瞬でやってのけたのです。

やった!おもしろい!まるで手品のようでした。

かみながこちゃんと龍は、リンゴをむしゃむしゃ食べながら話しました。

「この髪いいね。すてき!それにこのリンゴ、おいしいね」

「そうだろう?

天の国でとれたものなんだ」

と、遠いところを見るような顔をします。

「それでね。

この髪の、いちばんすごいのはね。

かみながこちゃんを、行くべき時に、行くべき場所へと、いつも導いてくれることなんだ。

まるで、高性能のカーナビゲーション・システムのように。

それは、命の力なんだ。

髪の力は、生命力そのものなんだよ。

命は、いつでも、行くべき道を知っている」

「ふ〜ん。そういうもんなの」

ほんとうにそうなら、苦労はないんじゃない?

かみながこちゃんは思いました。

だって、生きてると、嫌なことや、思い通りにならないことも、いっぱいあるじゃん!

ママの病気とか、パパがどっかに行っちゃったこととかさ。

引越しだって嫌だった。

あれが行くべき道だったなんて思えないし!

龍は、かみながこちゃんの、ちょっと固まったような表情を、チラッと見ながら続けます。

「だけど、髪の力には、弱点もいくつかある。

まずね、髪を、根っこのところで、ギュッと強くつかまれると、かみながこちゃんは、動けなくなってしまう。

じゅうぶん気をつけることだ」

「え? じゃあ、床屋さんにも行かないほうがいいってこと?」

龍は、わははは、と、あたりの空気が震えるほどの大声で笑いました。

「そうだね。その髪は、自分で好きな長さに調節できるからね。

床屋さんは、行かなくてもいいんだ」

そう言ってから、少し真剣な目になります。

「髪を根っこのところでつかまれないようにすること。

それから、絶対に、髪を切られないように気をつけなさい。

深く深く眠り込んでしまうし、切られた長さの分だけ、力を失ってしまうから。

この髪は、かみながこちゃんの血みたいなものなんだ。

かみながこちゃんの命が形になったものだからね」

龍はそういうと、やさしくほほえみました。

6 「髪のパワーを目覚めさせる方法があるんだよ」

「さあ、それじゃあ、髪のパワーを、目覚めさせるとしようか。

パワーを入れるスイッチは、いろいろあるが、簡単なのは呼吸法だよ。

やり方はとても簡単だから、覚えておくといい」

「呼吸って、いつもしてるけどな」と思ったかみながこちゃんに向かって、龍はこういいました。

「まず最初に、自分が呼吸していることを感じてみること。

ふだん、息を吐いて、吸って、吐いて、吸ってって、みんな、どんなときもやっているだろう」

「そりゃそうだよ。息を止めたら、死んじゃうもんね」

「けれど、それを意識している人は、あまりいない。

呼吸を意識的にやっている人はもっと少ない。

でもね、呼吸を意識してやってみるだけで、神秘的な力が働きだす。

元気が湧いて、病気になりにくくなるし、治っていくこともある。

頭がよくなるし、気持ちが明るくなる。

運だってよくなるんだ」

「病気が、治ってく? 頭がよくなる? 運もよくなる? それ、ほんと!?」

かみながこちゃんはそれを聞いて、がぜん、興味がわいてきました。

「そうさ、本当さ。嘘じゃない。

まず、息を吐いて、吸っていること、それ自体を、よく感じてみるんだ。

一緒にやってみようか」

「うん!」

「口を閉じて。口は、通常は、閉じていたほうが効果的だよ」

あわてて、口を閉じました。

お兄ちゃんたちから「お前、ぽかん口だぞ」とよく言われているのです。

「いいかな。

鼻の中を、空気がしゅっと出て行く。すっと入ってくる。

そのかすかな音を感じてみるんだ。

空気が鼻の穴をこする感触を感じるんだよ。

目を閉じてしばらくやってごらん」

「あ、ほんとだ・・・」

「身の回りには、膨大な空気があるんだ。

呼吸のたびに出入りしているものは、酸素や二酸化炭素だけじゃない。

生命エネルギーが出たり入ったりしているんだよ。

吸う息のひといき、ひといきには、大自然の命のパワーが入っているんだ」

「へえ〜!? 大自然って?」

「身の回りにある、お日様とか、森とか、川とか、海とか、雲、風、土とかね」

「動物とか、虫とかも?」

「そうそう。よくわかったね。

みんなが出し合った命のパワーが、小さな竜巻となって、かみながこちゃんの鼻から入ってくる。

その竜巻が体の中を巡って、かみながこちゃんを元気にする。

そして、吐く息のひといき、ひといきには、実は、その人の心のエネルギーが入っている。

いいことを考えている人からは、周囲を元気にする息が出る。

わるいことを考えている人からは、周囲が元気を失う息が出るんだよ」

「いやだあ〜、なにそれ、うそでしょう」

かみながこちゃんはそう思いましたが、確かに、いじわるな子の近くにいると元気がなくなります。

「思いやりのある考え方をしたり、いい言葉をつかうとき、実はその人は、命の薬になるパワーが入った空気を、自分からみんなにプレゼントしているんだよ。

反対に、悪口や愚痴ばかり考えたり、口にしたりしている人は、自覚なしに、猛毒の空気を吐いている。自分もそれを吸っちゃってるんだ。

喧嘩ばっかりしているおうちの観葉植物はすぐ枯れちゃうんだよ。植物はがんばって吸い取ってくれるから」

「うげ〜・・・嫌だね。わたし、気をつけるよ」

「ちょっと話がそれちゃったけどね。

自分の内側と外側は、呼吸でつながっている。

命のエネルギーが、息を吸ったり吐いたりするたびに、循環しているんだよ。

だから、呼吸に集中すると、生命力の循環を大きくできるんだ。

わかるかな?」

「うーん。それ、ちょっと難しいなあ」

「そうかい。

そうしたら、自分の呼吸の数を100まで数えてみること。

そのときに、軽くほほえみながらやるんだ。

ほほえむと、自然と心が明るくなるし、わるい考えが浮かびにくいからね。

慣れてきたら、次第に、空気を吐く量を増やしていく。

すると、吸う量も増えていくはずだ」

「よくわからないけど、やってみるね」

かみながこちゃんは、龍の言った通りに、ほほえみを絶やさないようにしながら、息を吸ったり吐いたりを繰り返してみました。

やればやるほど自分の心が静かになっていくのがわかります。

からだの隅々まで、目が覚めていくような感覚がありました。

それに、おなかの底から力がみなぎってきます。

それとともに、髪の毛が、ぶわあ、ぶわあ、と波立ち始めて、かみながこちゃんはびっくりしました。

「その調子だ。うん、とてもいい。

そうしたら次はね。

呼吸と一緒に、生命エネルギーを動かしてごらん」

「生命エネルギー?」

「そうだよ。生き物は、みんな生命エネルギーで動いているんだけどね。

意識の力で、自分の中にある生命エネルギーを動かすことができる。

白く輝く光の玉を思い浮かべるとやりやすい。

今度はね、息を吸ったり吐いたりするたびに、光の玉が、背骨に沿って上下するところをイメージしてごらん」

やってみると、背骨のあたりにゾクゾクした感覚が走ります。

髪はいよいよ大きく広がって暴れ出し、台風の時の大木のように、ぶわん、ぶわんと大きく揺れるのでした。

かみながこちゃんは自分の目がらんらんと輝いていることを知りませんでした。

「そうだ。うん。これは、すごいなあ。ストップ、ストップ」

かみながこちゃんがはっと我に返ると、髪の大暴れは治まりました。

「大したものだよ。

これから、いろんな呼吸法を教えてあげるから、少しずつ練習してみるといいよ。

15分でもいいからね。

それで、いいかい。

次に目を覚ました時には、かみながこちゃんになって、手や足よりも自由自在に、髪を操れるようになっているからね。

 
 

そうそう。一つだけ言っておこうね。

髪のために自分がいるのではない。

自分のために髪があるんだ。

本末転倒にならないようにすることだ。

それを忘れないようにね」

 

「あの龍の言葉って、どういう意味だったんだろう。

髪のために自分がいるのではない。

自分のために髪があるんだって」

そう思いながら目を上げると、かみながこちゃんの髪は、薄い光を放ちながら、家いえの屋根を越えて、公園を横切って、小学校の上を越えて、まだまだ先へ、ずんずん伸びています。

自分の髪なのに、どこまで伸びているのか、ちっともわかりません。

かみながこちゃんは髪の上を歩いているうちに、最初の勢いはどこへやらで、不安になってきました。

「龍のやつ、進めばいいって言ってたけど、どこまで行けばいいのよ」

そのとき、そうだ!とひらめきました。

この道路は、ひらべったいから、歩かなければならないのです。

「滑り台にしちゃえ!」

かみながこちゃんは、ぺたっと座り込んで、自分のお尻の後ろ側の髪の毛を、ぐいっと持ち上げました。

ぐぐぐっ。

そのまま、どんどんもちあげると、10階建てビルくらいの高さのロング滑り台になりました。

かみながこちゃんは、びゅーん!とすごい勢いで、滑りおりました。

「ひゃー!」

 下まで降りきらないうちに、また髪を持ち上げていけば、ずーっと滑っていくことができます。

 そのうちジェットコースターよりも早くなって、かみながこちゃんは、空気を切り裂くように進みました。

 おしりがヤケドしないように、髪の一部を座布団のようにしています。

 分厚い雲がいつのまにか消えて、月明かりの下、どこまでも続く滑り台を、かみながこちゃんは猛スピードで滑り、あっと言う間に、海辺にたどり着きました。

 月の光を受けて、きらきら輝く白い砂浜が目の前にあります。

 砂浜のうえを、かみながこちゃんの髪が月明かりを反射して、虹のように光って横切っています。

 かみながこちゃんは砂浜の上にある髪を踏みしめて歩きました。キュッキュッと、砂が音を立てます。

 波打ち際まで来ました。

 波が泡立ちながら、静かに、寄せては返します。

 かみながこちゃんの髪は、海の上に浮かんで、ゆらりゆらりと揺れています。

 目を細めて遠くをみると、髪はたえまなく揺れながら、かなたの沖のほうへと渡っているのでした。

 それを眺めるうちに、かみながこちゃんは胸がパッと開いたような、さわやかな気持ちになりました。

「行ってみようかな。私の選んだ道だから」

(第三話に続く)

画像: 6 「髪のパワーを目覚めさせる方法があるんだよ」

西田普(にしだあまね)
1972年、東京都生まれ。早稲田大学卒業。作家、「アマテラス!」編集長。(株)光出版 代表取締役。月刊『ゆほびか』編集長を務めるとともに、 季刊誌『ゆほびかGOLD幸せなお金持ちになる本』を創刊し、編集長を兼務(〜2019年9月、ともにマキノ出版)。書籍ムックの企画編集も手がけ、累計部数は300万部を突破。健康・開運をテーマしたブログがアメーバ人気ブログランキング「自己啓発ジャンル」で1位を獲得。現在、アメーバオフィシャルブログ・プロフェッショナル部門、月間のアクセス数は315万を記録。物語創作がライフワークで、第1作の「あなたがお空の上で決めてきたこと」(永岡書店)が好評を博している。ブログ「自然に還れば、健康になるでしょう」https://ameblo.jp/toru-nishida/

*この物語はフィクションです。実在の人物とは一切関係がありません。

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