胎内記憶を持つ子どもたちやスピリチュアルなマスターたち、自然の声が教えてくれたことを元に書いた物語「あなたがお空の上で決めてきたこと」。
ブログで大好評をいただいた内容を書籍(永岡書店刊行)にした時に、ページの関係でおさまりきらなかった書き下ろしのパートも含めた完全版を、こちらでお届けしていきます。

9●お空の上にある「夢の実」の果樹園

お空の上にいる白いヒゲのおじさんは、キラキラ輝く目をして、「夢を叶えるコツ」をみことちゃんに話していきます。

一つめのコツは「“心に咲く花”を枯らさないこと」。

二つののコツは、「自分だけの“夢の実”を育てること」。

「夢の実、ってなあに?」

「お空の上でね、みんな、自分の“夢の実”を選んで生まれてきているんだよ。

みんな、ちゃーんと大事な夢をもって生まれてきているんだ。

その夢は必ず、叶うようになっているんだよ。

人が本気で、願いを叶えようと決めた時、

全宇宙が協力して、その実現を助けてくれるんだよ」

「それって本当?」

「本当さ。それじゃあ、みことちゃん。

ちょっと、おもしろいところに連れてってあげようね」

「え? なになに? どこに?」
 
 
 

気がつくと、みことちゃんは、静かな木立の中に一人で立っていました。

周囲の地面からは、もやが立ち上っています。

見渡す限り地平線まで、まるい果物がたくさん実った、木が生えているのでした。

「おじさん?! どこ?」

白いヒゲのおじさんはどこにもいません。

木々の間を歩いてみると、どの木にも、さまざまな実がなっていて、

赤、黄、オレンジ、緑、青、紫、桃色、どれも、透き通った光を放っています。

シャボン玉のように、虹色のものもあります。大きさもいろいろです。

果てしない果樹園に、色とりどりの、まあるい果物がなっていて、はるか彼方まで、不思議なほど、くっきりと鮮やかに見えるのでした。

みことちゃんが呆然としていると、白いヒゲのおじさんの声が大音量で響き渡りました。

「これが、“夢の実”だよ。この果樹園に、宇宙のすべての夢があるんだ」

「ど、どういうこと?」

「みんなここから、好きな夢の実を選んで生まれるのさ。

みことちゃん、夢の実に触ってみてごらん。

いろんな夢の実が、どんな内容なのかを、ちょっと見ることができるよ」

そこで、みことちゃんは、いちばん近くの木のところまで行ってみました。

すいーっと近づいて、夢の実に触ってみたら、一瞬みかんのような香りがしたかと思うと、不思議な景色が見えてきました。
 
 
 

《晴れた日に、家族が、広い公園を散歩しています。

お父さんとお母さんが、3歳くらいの女の子を連れて歩いていました。

その子はえんじ色のコーデュロイのオーバーオールを着て、

お父さんと右手をつなぎ、お母さんと左手をつなぎ、「いちにのさーん」と言ってはジャンプしています。

お父さんとお母さんは、その子がジャンプするたびに、手で持ち上げて、ブランコのようにしてあげています。

その子は口をいっぱい開けて笑っていました。

お父さんとお母さんも笑っています》
 
 
 

「おじさん、この景色は何? あれは、わたしのパパとママ。あの女の子、私!?」

「そうだよ。これはね、みことちゃんのママの夢。みことちゃんのパパの夢。

で、みことちゃんの夢。みんなが、どうしても叶えたかった夢なんだ。

ママと、パパが、お空の上での約束通りに出会って、お姉ちゃんがお空の上からやってきて、その後、お兄ちゃんもやってきて、みことちゃんがやってきた。

みんなお空の上からやってきて、いまの家族になったんだ。

いっぱい楽しい出来事があったんじゃないかい。

それは全部、叶えられた夢だったんだよ」

それを聞いてみことちゃんは胸のあたりがとても暖かくなりました。

「さあ、どんどん、夢の実に触って、中身を見てごらん」
 
 

《若い画家が、無我夢中で絵を描いています。

大きなキャンバスに情熱を叩きつけるように、絵の具を手で直接塗っています。

深い藍色の中に光が渦巻いて動いているような絵でした》
 

次の夢の実は・・・
 

《おじいさんが、赤く実ったリンゴを、さも愛しそうに触っています。

りんごを撫でながら、おじいさんはリンゴに「ありがとう」と話しかけています》
 

次の夢の実は・・・
 

《はるかにそびえる高層建築のビルを、誇らしげな顔で見上げている、作業服姿の人たちがいます。高層建築なのに、このビルは、木造でした》
 

次の夢の実は・・・
 

《大きな会場で、たくさんの人を前に快活に話している男性がいます。

彼は世界中の人に、自分らしく生きる方法を伝えているのです》
 

白いヒゲのおじさんの声が、静かに言いました。
 

「この一つ一つが、かけがえのない夢なんだよ。

お空の上で選んだ、夢の特徴はね。

その夢が叶った時に、自分が嬉しい。周りも嬉しい。

地球の命にとっても嬉しい。

それが、お空の上で選んだ夢の特徴なんだ。

必ず、みんな、そういう最高の夢を持っているんだよ。

そしてそれは、必ずしも一人に一つじゃない」

「ええっ!?いくつもあるってこと?」

「そうだよ。とてもたくさんの夢を叶える人もいる。

何が、人生で最高の夢なのかは、その人にしかわからない。

過去の夢も、未来の夢も、すべてここにあるんだ」
 

みことちゃんは、時がたつのも忘れて、いろんな夢を見ました。
 

《寝そべって本を読んでいる、小さな男の子がいます。

男の子は本のさし絵をなぞりながら、何かをつぶやいます》
 

《ジーンズとTシャツの女の人がベランダでたくさんの洗濯物を干しています。

五月の風に吹かれて、洗濯物が気持ち良さそうに揺れています》
 

《コーヒーをかたわらに置いて、パソコンで文章を書くことに没頭している女性がいます。

自分が書く文章をたくさんの読者が待っているのを知っているのです》
 

《若い男性が森の中に入って、大木に触っています。

彼は木と対話することができ、森を守っているのです》
 

《狩人が荒削りの槍で、草食動物をしとめて、雄叫びをあげています。

静かに流れ続ける液体で、地面は黒くなっています》
 

《流線型の乗り物の中で、ハンドルを握っている男性がいます。

乗り物は猛スピードで風を切り裂いてカーブを曲がります》
 

《高校生くらいの女の子が、ステージ上で楽器を弾いています。

3年間、共にがんばった高校の仲間たちと、今日は最後の演奏会なのです》
 

《氷の上で見事な演技を決めたスケート選手が大喝采を浴びています。

彼は練習中の大怪我から復活したのです。故郷の人たちはみんな自分の人生と重ね合わせながら、涙を浮かべて応援していました》
 

《オレンジ色の太陽が沈む砂浜で写真を撮っているカップルがいます。

二人は婚約したばかりです》
 

《泥だらけの男の人が、土の中から何かを見つけて歓声をあげています。

誰もが伝説としか思っていなかった古代の遺跡を、私財をなげうって発見したのです》
 

《病院の白いベッドに寝て、窓の外を眺めて、ノートに何かを書いている女の子がいました。

秋の日差しを浴びて、イチョウの葉が金色に輝いています》
 

みことちゃんはその女の子を一目見て、今から数年後の自分だと気づきました。

「あ、これ、私だ。また入院しちゃっている。

何を書いているんだろう」

その次の夢の実は…。

みことちゃんは生涯、その景色を忘れませんでした。

《ひとりのやせた青年が、木でできた十字架を担いで、裸足でよろよろと歩いています。

その傷ついた顔には、乾いた血がこびりついていましたが、不思議とほほえんでいるようにも見えました。

青年は、なぜか、みことちゃんに気がついて、ちょっと驚いた様子でしたが、

また前を向いて、行先の丘に向かって、一歩一歩、歩いて行きました》

「この人は誰!?」
 

白いヒゲのおじさんはそれには答えません。

「試練と見分けのつかない夢がある。

いや、夢と試練は、コインの裏と表ということもあるんだ。

人間の夢は無限だ。

わしらは、とても尊敬しているんだよ」

おじさんの声は遠くから響いてくるようでした。

次の実は・・・

《ミツバチが花の間を楽しそうに飛んでいます》

次の実は・・・

《大きな大きな恐竜が、星空を見上げています》
 
 

「すべての命は、夢を見ている」と、遠くから声が響きました。

 

次の、夢の実の中には、金色に輝く、静かな世界がありました。

《見たこともない服を着た、髪の長い、きれいな女の人が、音もなく進んでいきます。

その女の人も、淡く金色に発光しています。

突然、女の人はみことちゃんに気づきました。

そして、ニコッと笑いかけてきました。

その目の色も、淡い金色に輝いています。

女の人は、みことちゃんに何かを話しかけようとしています》
 

ドキドキして目をそらしたみことちゃんに、おじさんは言いました。

「そこはね、とても進化した、平和な星だよ。

彼女は、みことちゃんを見つけた。

それは彼女が、別の星の友だちに出会う夢を叶えた瞬間なんだ」

「ええーっ!?」

「彼女とは、いつかきっとまた逢えるよ」

次の「夢の実」の中では、暗闇の中で、新しい太陽が輝き、惑星が生まれていました。

「星々も夢を見るんだ」

深々とした声が、宇宙に響き渡ります。

みことちゃんは大きなため息をつきました。

「おじさん、私、もうじゅうぶんだよ。ありがとう」

「それは良かった。実は今ね、地球はすごいスピードで進化しているんだ。

“地球さんの命”が、そうしようって決めたんだよ。

それに合わせて、地球に生きている人たちの夢が、と~っても叶いやすくなっているんだよ。

お空の下を、ちょっと見てごらん」

 

みことちゃんは雲の間から、地上を見下ろしてみました。

すると、地球全体が、薄明かりに包まれたように、光を放っています。

昼のところも、夜のところも、同じように、静かに輝いていました。

 

「おじさん、地上が輝いてるよ!」

「そうだろう。あれは、夢の輝きなんだ。

今年から、たくさんの人が魂の夢を叶えていくことになっているんだよ。

それも、想像もつかないような形で、どんどん叶っていく流れになっているんだ。

どんな夢でもいいんだよ。

夢が今はわからない、という人も、心配いらない。

やりたかったことをどんどんやってみるといいよ。

それは、全部、お空の上で自分で選んできた夢なんだ。

誰にも遠慮いらない。遠慮しちゃいけない。

夢の主役は自分なんだよ。

夢を思い描けるってことはね。

あなたの魂が

『その夢は叶いますよ』

『その夢を叶えようとして、生まれてきたんだよ』

って教えてくれてるんだ。

そして、宇宙のすべての夢は、不思議な形でつながっているんだよ」

そう言われて、みことちゃんは突然、気づきました。

さっき、夢の実の中に見た、一つの夢。

コーヒーを飲みながら、パソコンで何かを書いているあの女の人は・・・

「あの人!!あれは、大人になった、未来の私なんだ!

パソコンに向かって、何か文章を書いていた。

それを、すっごくたくさんの人が楽しみにして、読んでくれているのがわかった。

だとしたら、私は、漫画家になるんじゃなくて、別のことで夢を叶えるのかな?」

気がつくと、みことちゃんは、お空の上で、元いた場所に立っていました。

目の前では、白いヒゲのおじさんが、ニコニコしておヒゲをなでています。

「おじさん・・・」

「みことちゃん、人は、目を開けたまま、夢を見ることができる。

地球という、夢の世界で遊んでいるようなものなんだ。

みことちゃんは、さっきこう言ったね。

《たくさんの人が楽しくなって、元気になるようなことをやりたい》って。

その夢はきっと叶うよ。

自分がうれしい。

周りもうれしい。

地球の命にとってもうれしい。

それは、あなたの魂が選んだ夢だから」

「おじさん、そう言ってくれて、ありがとう。

私もそんな気がしてきたよ!」

コラム 人が心の底から何かを望む時、全宇宙が協力する

羊飼いの少年サンチャゴが「夢の中で見た宝物」を探して旅する、「アルケミスト 夢を旅した少年」(角川文庫)という本があります。

ブラジル人の作家パウロ・コエーリョの代表作の一つで、世界中で数千万部も売れ、愛されている本です。日本では、山川紘矢先生・亜希子先生ご夫妻が翻訳して出版されています。初めて読んだ時、「ここに書いてあるのは本当のことだ」と、興奮が止まりませんでした。

「人が心の底から何かを望む時、全宇宙が協力して、夢の実現を助ける」ということが、はっきり書いてあるのです。

人はなぜ夢を持つのか? どのようにして夢に近づくのか?

何を手に入れるのか?

魂の冒険を描いたこの小説が、僕は大好きなんです。ボロボロになるまで読んで、何回も買い直し、大切な人たちにも贈ってきました。

「アルケミスト」というのは、錬金術師のことですが、この本での「アルケミスト」とは、「大いなる魂と対話する人」というような意味合いです。

本書を書いている時、ふと、この本を手にとって、何気なく開いたページに、こんな言葉が書いてありました。

「賢人は、この自然の世界は単なるまぼろしで、天国の写しに過ぎないと言っている。この世が存在しているということは、ただ単に、完全なる世界が存在するという証拠に過ぎないのだ。目に見えるものを通して、人間が霊的な教えと神の知恵の素晴らしさを理解するために、神はこの世界を作られたのだ。

それが、行動を通して学ぶと私が言ったことなのだよ」(「アルケミスト」より)

これは主人公サンチャゴの師である、アルケミストのセリフです。

人の夢には本当に、終わりがありません。それは時に試練の姿を取ることもあるようです。

 どうすれば自分の魂の願いを知ることができるのでしょう? 

そのヒントを、次の章でみことちゃんは教わっていきます。

西田普(にしだあまね)
1972年、東京都生まれ。早稲田大学卒業。作家、(株)光出版 代表取締役。月刊『ゆほびか』編集長を務めるとともに、 季刊誌『ゆほびかGOLD幸せなお金持ちになる本』を創刊し、編集長を兼務(〜2019年9月、ともにマキノ出版)。書籍ムックの企画編集も手がけ、累計部数は300万部を突破。健康・開運をテーマしたブログがアメーバ人気ブログランキング「自己啓発ジャンル」で1位を獲得。現在、アメーバオフィシャルブログ・プロフェッショナル部門、月間のアクセス数は315万を記録。物語創作がライフワークで、第1作の「あなたがお空の上で決めてきたこと」(永岡書店)が好評を博している。ブログ「自然に還れば、健康になるでしょう」https://ameblo.jp/toru-nishida/

書籍「あなたがお空の上で決めてきたこと」(永岡書店)

www.amazon.co.jp

*この物語はフィクションです。実在の人物、団体、出来事とは関係がありません