ブログで大好評をいただいた内容を書籍(永岡書店刊行)にした時に、ページの関係でおさまりきらなかった書き下ろしのパートも含めた完全版を、こちらでお届けしていきます。
5●あなたの魂は、どんな困難よりも大きい!
みことちゃんは、とてもウキウキしていました。
今日はみことちゃんの11歳のお誕生日のお祝いだからです。
カゼ気味で、学校は休んだのですが、お祝いが始まったら、ピンピン元気になりました。
みことちゃんにとって、この世で一番おいしい大好物、ママのハンバーグの焼ける匂いがします。
ご飯はお赤飯。あさりのお味噌汁が、湯気を立てています。
パパはさっき、「白い犬のオジサン」とスーパーに行って、タイのお刺身を買ってきてくれていました。
「めでタイからね」といつものオヤジギャグを嬉しそうにいっています。
ケーキは、ママの手作り。
卵の入っていないパン生地スポンジで、イチゴがたくさんのバースデーケーキです。
みんなで、楽しくご飯を食べて、ハッピーバースデーの歌を歌います。
ハッピーバースデートゥーユー
ハッピーバースデートゥーユー
ハッピーバースデーディアみことちゃん
ハッピーバースデートゥーユー
みことちゃん、生まれてきてくれてありがとう!
ろうそくの炎を吹き消すとき、嬉しさのあまり、思いっきり息を吹きすぎて、ケーキにロウが飛び散ってしまいました。
「もう、しょうがねえなあ」と、お兄ちゃんがケーキのロウを取ってくれます。
みことちゃんはお誕生日プレゼントと、みんなのメッセージが書いてあるバースデーカードをもらいました。
絵の得意なお姉ちゃんは、「ダンスを踊っている白い犬のオジサン」の絵を描いてくれました。
お兄ちゃんは、なぜか、ウンチのキャラクターが「おめでとう。ますますいいウンチを」とおどけているイラストを描いています。
みんなでそれを見て、大笑いしました。
ママは、「お祝いとお礼の言葉」を書いてくれました。
パパは、「みことちゃんの詩」を書いてくれました。
プレゼントの箱を開けると、みことちゃんがずっと欲しかった、漫画を描くセット一式が入っていました。
「うわあー、ありがとう!! やったあ!!!」
こんないい日なら、毎日がお誕生日だったらいいのに。
ただ……みことちゃんは、ママの顔色が優れないことが、ずっと気になっていました。
最近、ママは、ずいぶん痩せて、歩く時もフラフラしていますし、顔は血の気がなく、緑色っぽいこともあるほどです。
ときどき、鼻血も出て止まらないことがあったのです。
それに……、夜、みことちゃんがおふとんに入ってから、ママとパパがいい争いをしてる声が聞こえてきて、目を覚ましたことが、このごろ何回かありました。
そのすべてが、胸に刺さったトゲのように気がかりでした。
最近のみことちゃんは、授業中もボーっとしたり、ランドセルを忘れたり、上履きのまま家に帰ってきたこともありました。
でも今日は、みことちゃんのお誕生日です。
ハッピーバースデーを歌った後は、プレゼントを手に持ったまま、みことちゃんの大好きな「となりのトトロ」の映画を見ました。
みんなでわいわい言いながら観ていたのですが、ママだけ静かです。
途中でママはスッと立ってトイレに行き、そのまま別の部屋に引っ込んでしまいました。
しばらくしてパパがこわばった顔で立ち上がると、ママが引っ込んでる部屋のほうに行きました。
その部屋から何か言い争うような声が聞こえてきます。
みことちゃんのお姉ちゃんとお兄ちゃんがさっと立ち上がると、リビングを出て、その部屋のほうに行きました。
みことちゃんはドキドキして立てません。
「となりのトトロ」をボーっと見ていたら鼻の奥がツンと痛くなり、涙がにじんできました。
ちょうど、トトロの映画では、さつきちゃんとメイちゃんの姉妹が、トトロと一緒に、ねこバスに乗って、病院に入院しているお母さんに会いに行く、みことちゃんの大好きなシーンでした。
その画面が、ぼやけてよく見えません。
向こうの部屋から、
「今日は、みことちゃんの誕生日なんだぞ!」
とお兄ちゃんのふるえる声が聞こえてきます。
パパは何か低い声で言っています。
「もうやめてよー」とお姉ちゃんの泣き声が聞こえます。
みことちゃんはソファに突っ伏しました。
ああー!
何も見たくない!
何も聞きたくない!
ここにいたくない!
突然、息が苦しくなって来ました。
目の前が暗くなります。
次の瞬間、みことちゃんは自分が大きな大きな光になって、地球上にスッと立っているのを感じました。
見渡すと地平線まで、数えきれない巨大な光の柱が立っています。
「ああっ……」
人や、動物や、植物たち、みんなみんなが光の柱で、お空と地上の間に立って、宇宙を支えているのでした。
みことちゃんは前にもこの景色を見たことがあるのを思い出しました。
そして、とても幸せな気持ちになって、ニッコリしました。
すると、みんながほほ笑み返して来ました。
気がつくと……、地球全体が見える深い藍色の場所を通り抜け、薄あかね色の世界に出ました。
目の前に、白い犬の「オジサン」がスッキリと立っています。
その輪郭は淡く白金色に輝いていました。
「やあ、みことちゃん。よく来たね。地上は楽しかったかい?」
「オジサン、どうして……。ここはお空の上ね」
「そうだよ」
「オジサン」は白い犬の姿から、もとの、白いヒゲのおじさんの姿に戻りました。
「地上は楽しかったかい。
いっぱいいっぱい、自分やみんなを好きになれたかな。
みんなを喜ばせてきたかい」
そう言われると、また鼻の奥がツンとして、みことちゃんは手でごしごし、目のあたりをこすりました。
「ああー、また、その質問するのね。ってことは私、今度こそ死んじゃったの?」
「今回は、ちょっと、予定外だったなあ。
みことちゃんの想いの力はそれだけ、実に、実に、強いってことだね」
「それってどういうこと?」
「みんな、生まれる前に、人生で体験する、おおまかな出来事は決めている。
けどね、想いの力で、どんどんシナリオが変わることってあるんだよ。
……変えられない出来事もあるけれど」
「じゃあ、いま、お空の上にきたのも、私の想いの力ってことなの」
「なんせ、さっきすごい力で、そう願ってたからね。ここまで響いてきたよ。
何も見たくない! 何も聞きたくない!ここにいたくない! って心の声が」
「やあねえ、モノマネしないでよ」
「何か出来事があったとするよね。嬉しいことも、嫌なこともある。
そのとき、どんな対応をするかが大事なんだよ。
たとえば、犬のウンチを踏んだ時、くっそーっ! って激怒することもできれば、
運がついたよ、って笑い飛ばすこともできる」
「もう、変な例ねえ」
「出来事は、ただ起きる。
そのときどうするかのほうが、大事なんだよ。
運命の展開は、その一瞬一瞬で変わる。
『起きた出来事に対して、なにを想い、どんな態度でいるかで運命は変わる』
これは覚えておいて損はないよ。
特に、みことちゃんは、自分の本質は魂だって知っているからね。
そういう人は、いろんなことが実現するのが、早いんだよ」
「え、そう。どうりで、誕生日プレゼントも、すっごく欲しいものをもらったよ」
「まあ、時には、そういう願いも叶いやすいだろう。
この宇宙には【望みは、明確にすると叶う】という法則があるからね。
ただし、【自分の本当の望み・自分の本当の気持ち】を明確に知っている人は
まだまだ少数派だ」
「じゃあさ、本当じゃない望みとか、本当じゃない望みがあるってこと?」
「そうさ。他の誰かの望みを、自分の望みだと信じている人は多いんだ。
自分の本当の望み・自分の本当の気持ちを明確に知っている人は、
人生がまさに思い通りになる。
いや、人生は自分の思い通りになっているってことを知っているんだ」
そういって、おじさんは、みことちゃんをジッと見ました。
「それでね、みことちゃん。
ここでお空に帰って来ても、また地上に行っても、どちらでもいいんだよ。
どちらでもね。無理をすることはない。よくがんばったよ」
がんばったと言ってもらって、みことちゃんは、この前オジサンに教わった『とびきり元気になるコツ』を、ママに一生懸命、話したことを思い出しました。
「ママはもう世界一優しくてかわいいから、この5つのコツをやったら、
すごく元気になって、もっとかわいくなって、今度は宇宙一になるよ!」
ママはニコニコ聞いてくれました。
でも、聞いてくれるだけじゃなくて、実際に元気になって欲しかったのです。
元気になって顔色も機嫌もよくなって……。
そうしたら、パパと、ママが、もしかしたら、仲良くなるかもしれない。
みんなで、もう一度だけ、キャンプに行きたい。
それは七夕のたんざくにナイショで書いた願いでした。
「私、もちろん、地上のみんなのところへ戻るよ。戻るけど……。
じゃあさ、私の願い方が足りないのかな?
私になにが足りないの? つらいよー」
みことちゃんは泣き始めました。
「よしよし。いっぱい泣いていいんだよ。
地上でも、あんなに我慢しなくてもよかったんだよ」
白いひげのおじさんは、とても優しい声で言います。
みことちゃんが泣き止むまで、おじさんは暖かい手で背中をなでてくれました。
「この前教えた、元気になるコツはね、
ママに伝えるのもいいんだけど、まずはみことちゃん自身がやるんだよ。
あれは『命をもっと愛する方法』なんだ。
みことちゃんの、ぜんそくもよくなるからね」
「ええっ!? そうだったの?」
「みことちゃんの『光の使命』にもプラスになるよ。
みことちゃんは、ママとパパを心配しているね。
彼らは、自分自身で、運命に立ち向かうことが大事なんだ。
自分をもっと愛せる、命をもっと愛せるっていうことを学ぶんだ」
そういわれると、みことちゃんはまた、息が苦しくなる気がしました。
みことちゃんは、ママとパパが、もうすぐ離婚することを知っているのです。
それも、みことちゃんがお空の上で選んだ「試練」の一つでした。
それでも、もっと仲良くなってほしい。前のように。
ママとパパの仲がわるくなっていったきっかけは、なんだったのか?
みことちゃんは、それもお空の上で見ていました。
それは、ママの 「心のカゼ」 。
そして、パパが、いつも忙しく働いて、家にほとんどいなかったことです。
パパは、自分の仕事が楽しくて、また、家族のためにと、夜遅くまで働いていたのですが、ママの「心のカゼ」になかなか気づきませんでした。
そのうちママの「心のカゼ」はひどくなり、体を壊すほどになったのです。
ご飯を食べきれないほど食べてトイレで吐いたり、逆に、全然、食べなかったり。
戸棚の中に隠している瓶から、薬をたくさん飲んで眠ったりしていることも、みことちゃんは知っていました。
ママはやめたくても、やめられませんでした。
パパがママの異変に気付いたとき、それは、夫婦の長い苦闘の始まりでした。
パパは、ママを病院に連れて行くことをなかなか、思いつけませんでした。
そして、一生懸命、言葉で説得してやめさせようとしました。
「こうすればいい」「ああすればいい」といろいろアドバイスしたのです。
パパは優しい人でしたが、ママのつらい気持ちに寄り添うことができず、ついに、ママを怒ってしまうという、大きな間違いをしたのです。
「どうして自分の体を大事にしないんだ! 子どもたちが心配しているのに、どうしてなんだ! 子どもたちを愛していないのか!?」
ママはすっかりパパのことが嫌になってしまいました。
「それより、みことちゃんが喘息なのは、あなたのアレルギー体質を遺伝的に受け継いでいるからだと思う。みことちゃんも、私もそれで苦労しています」
と、パパに言い返したのです。
パパが、ママに、「一緒に心のカゼを治す病院に行こう、お医者さんに診てもらおう。一緒にカウンセリング受けよう」と言い始めても、ママは、首を縦にふりませんでした。
みことちゃんは、だれも悪い人がいないのを知っているのです。
だれも悪くありません。みんながんばったのです。
みことちゃんは、ママの小さいころのことも、お空の上で見て、全部知っています。
ママは、はつらつとした女の子でしたが、柔らかく、傷つきやすい心で、小さいころからずっと、誰にも言えない苦しみを抱えていました。
ママのお父さんは、働き者でしたが、お酒を飲むと急に怒りっぽくなりました。
ママのお母さんは、体調が悪いことが多く、夫の悪口をしょっちゅう子どもたちに聞かせていました。
両親が夫婦喧嘩しているとき、小さかったママは、泣きたいのをこらえて、おびえている弟を一生懸命かばっていたのです。
ママは賢くて、運動神経もよく、友達はいたのですが、むしょうに悲しくなることがあり、そういうときは、お布団をかぶって、一人、ただ泣いていました。
思春期には、「心のカゼ」になって、眠れなかったり、食べ過ぎて吐いたり、逆に食べなかったりという時期もあったのです。
ママはパパと大恋愛をして結婚したのですが、やがて、「心のカゼ」がぶり返しました。
それは、ママの弟が、亡くなったことがきっかけでした。
そんなことを思い浮かべて、みことちゃんがぼんやりしていると…。
白いひげのおじさんが、みことちゃんの両肩に、あたたかい両手を置いて、みことちゃんの目の奥をのぞきこんでいいました。
「大丈夫さ。ママはママで、パパはパパで、自分自身で『光の使命』に取り組める力があるからね。
どんな困難よりも、みことちゃんの魂は大きい。
どんな困難よりも、ママの魂は大きい。
どんな困難よりも、パパの魂は大きい。
だからね、なにも心配はいらない。安心していいよ」
みことちゃんは、白いひげのおじさんのまなざしと、言葉から、あたたかい光を感じて、とても明るい気持ちになりました。
「ありがとう! おじさん、だーいすき!
わたし、気持ちが今まで、ちょっと闇だったけど、
おじさんのひとことで、光になったよ」
(物語の5 ここまで)
コラム 死んだ時にお空の上で尋ねられる3つの質問
胎内記憶を覚えている子どもたちが語るように、「お空の上の世界」って、ほんとうにあるんでしょうか?
人間が生まれ変わりを繰り返しているって、ほんとうなのでしょうか?
「胎内記憶」以外にも、その手がかりはあります。
それは、一度死にかけて、この世に戻って来た人たち。
いわゆる「臨死体験」をした人たちの存在です。
以前ゆほびかでも「あの世」の特集を何度かやったことがあります。
日本やアメリカの、臨死体験をした人たちのお話を載せました。
その中には有名な脳外科医や大学教授もいます。
死にかけて、お空の上を見て、その記憶を覚えている人たちは、こう言います。
「光り輝くとても素晴らしいところだった」
「なんの心配もいらないとわかった」
「あの世は愛の世界で、自分は愛の存在だとわかった」
ある著名な医師は取材に答えて、この世を去って、お空の上に行くと「何者かに、3つのことを尋ねられるようです」と、教えてくれました。
●死んだ時にお空の上で尋ねられる3つの質問
1 あなたは楽しみましたか?
2 あなたは愛しましたか?
3 あなたは喜ばせましたか?
この3つの質問は、違うことを聞いているように見えますが、実は3つとも、同じことを聞いているのだそうです。
『人生を愛でいっぱいにしましたか?』という質問です。
(その6に続く)
西田普(にしだあまね)
1972年、東京都生まれ。早稲田大学卒業。作家、(株)光出版 代表取締役。月刊『ゆほびか』編集長を務めるとともに、 季刊誌『ゆほびかGOLD幸せなお金持ちになる本』を創刊し、編集長を兼務(〜2019年9月、ともにマキノ出版)。書籍ムックの企画編集も手がけ、累計部数は300万部を突破。健康・開運をテーマしたブログがアメーバ人気ブログランキング「自己啓発ジャンル」で1位を獲得。現在、アメーバオフィシャルブログ・プロフェッショナル部門、月間のアクセス数は315万を記録。物語創作がライフワークで、第1作の「あなたがお空の上で決めてきたこと」(永岡書店)が好評を博している。ブログ「自然に還れば、健康になるでしょう」https://ameblo.jp/toru-nishida/
*この物語はフィクションです。実在の人物とは一切関係がありません。